リュカ・カルトン　　ＬＵＣＡＳ　ＣＡＲＴＯＮ　　　2000年２月10日
　　初めての三ツ星レストラン　すべてに感動！

　　スイスのツェルマットでスキ−を楽しんだ後、初めてのパリでの夜をいきなり三ツ星レストランで過ごしてみようと予約を入れてみました。予約はスキ−ツア−に参加していたクロサワトラベルにお願いしました。お店の候補はいくつもありましたが、結局リュカ・カルトンにしました。泊まるホテルから歩いて行け、それぞれの皿にグラスワインの付くコ−スメニュ−があるので、注文が楽そうだなぁと思い決めました。

　　ホテルから歩いて10分ほどでマドレ−ヌ広場に到着、場所はすぐにわかりました。ドアを開けてくれ、中に入ります。コ−トを預けて、予約の名前を告げます。　今回、「フランスを代表するような店に行くのだから、なるべくフランス語を使おう！」と思い、使いそうなフレ−ズをいくつか暗記してきました。 J'ai reserve au　nom de○○.　ジェ　レゼルヴェ　オ　ノン　ドゥ○○　（予約した○○です）　と告げると、席に案内されます。いちばん奥の真ん中の席でしたが、一人なのでまわりがよく見渡せます。まだ8時なのでお客さんは半分も入っていません。建物はア−ル・ヌ−ボ−の歴史的建造物だそうで、曲線と鏡が生かされた内装はとても豪華なのですが、それでいてくつろげる雰囲気になっています。

　すぐにギャルソンが来て「・・・・アペリティフ？」と聞いてきます。aperitif(食前酒）は何にしますか？と聞いてきたのだなぁと思い、Champagne,s'il vous plait.　シャンパ−ニュ　シルブプレ（シャンパンをお願いします）と答えます。レストランで聞かれることは決まっているので、キ−ワ−ドの単語だけ覚えていれば大体の意味はわかります。

　グラスにシャンパンが注がれ、今度はギャルソンがメニュ−を持ってきます。前菜やメインの料理が載っている、ア・ラ・カルトのメニュ−とコ−スのメニュ−が別々に渡されます。初心者にはメニュ−を読むのが難しいので、迷わずコ−スメニュ−にします。

　上の方に　ＭＥＮＵ　ＤＥＧＵＳＴＡＴＩＯＮ　ムニュ　デギュスタシオン（お試しコ−ス）と書かれています。左右に前菜からデザ−トまで４種類の料理名が書かれており、右側の料理名の下には添えられるワインの銘柄が記入されています。

　　しばらくするとギャルソンが注文を取りにきます。コ−スメニュ−の右側を指差し　Ｊｅ　prends　ca.　ジュ　プラン　サ（これにします）　と答えます。ギャルソンが「ムニュ・デギュスタシオン、トレビアン！」と反応します。その「トレビアン」がとてもすばらしく、こちらまで「トレビアン！」と叫びたくなってしまいます。

　　また「・・・・・ミネラル？」と聞かれます。d'eau minerale ド−　ミネラル（ミネラルウォ−タ−）のことを聞かれているので、Non　gazeuse,s'il vous plait　ノン　ガズ−ズ　シルブプレ（ガスなしのをお願いします）　と答えます。後は料理を楽しむだけです。

　ひとつ目の前菜には「ホタテとフォワグラのパイ包み焼き　トリュフソ−ス」が出されます。大皿に焼かれた、ホタテをかたどったパイを目の前で切って取り分けてくれます。パイ皮で旨みが閉じ込められたフォワグラが美味しいのは言うまでもありませんが、ホタテもその存在を充分に主張しており、香り高いトリュフのソ−スでいただくと、その美味しさに感動してしまいます。

　また、ワインはボトルを見せて説明し、グラスに注いでくれます。銘柄は覚えていませんが、90年の白。初心者の私には、その今までに経験したことのない味わいに圧倒されました。また、そのワインを飲みながら料理をいただくと、さらに料理の美味しさがレベルアップして、この上なく幸せな気分に浸れます。ワインはつぎ足してくれるので１杯半くらいいあだけます。
　
　ふた皿目は「トリュフのロワイヤル」と82年の白ワイン。こちらも料理・ワイン、そしてその相性とも申し分ありません。
　
　気がつくと満席になっていました。となりはアメリカ人と思しき熟年カップルとフランス人の美男美女のカップル。きっと記念日か何かなのでしょう。写真を撮ってもらっている、ちょっと緊張気味のカップルもいます。一人だと料理が出てくる間の時間をもてあましてしまいますが、まわりのお客さんたちを観察するのもおもしろいものです。

　メインは「トリュフを挟んだ肥育鶏のクリ−ムソ−ス」、ワインは９７年の白が出されます。前菜に比べると、”驚くほど”というわけではありませんが充分に美味しく、また３種類目の白ワインもまったく異なる味わいで、メインを引き立ててくれています。
　
　デザ−トにはアイスクリ−ムを使ったものと、７５年のポ−トワインが出されます。とてもシンプルなデザ−トですが、美味しさは格別です。すっきりした甘さのワインも食事の締めくくりには最適です。

　ギャルソンが「・・・・・カフェ　ウ　テ？」と聞いてきます。これはわかりやすい。Cafe ou the?(コ−ヒ−か紅茶？）どちらにしますか？ということなので、Cafe,s'il vous plait.カフェシルブプレ（コ−ヒ−をお願いします）と答えます。

　コ−ヒ−と一緒にプチフ−ル（小さな焼き菓子やチョコレ−トなど）が出てきます。時間はもう１１時を回っています。そろそろ会計ですが、この店のサ−ビスの方々は、常にさりげなくお客のしぐさを見ており、呼ぶそぶりを見せるとすぐに来てくれます。また動作や話し方もそつがなく、非の打ち所がないサ−ビスはまさに完璧です。一人で訪れた一見の日本人にも
分け隔てなくもてなしてくれます。

　ギャルソンに　L'addition,s'il vous plait.　ラディシィオン　シルブプレ（お勘定をお願いします）と伝えます。タクシ−を頼むなら Vous pouvez m'appeler un taxi?　ヴ−　プヴェ　マプレ　アン　タクスィ−（タクシ−を呼んでくれますか？）というところですが、近いのでその必要はありません。

　勘定書が来ました。2,880フラン（439.05ユ−ロ）、日本円で5万円以上のいいお値段です。でも、この料理・ワイン・雰囲気・サ−ビスを考えると納得できます。　カ−ドを添えて　S'il vous piait. シルブプレ（お願いします）　と言って渡します。

　サ−ビス料は含まれていますが、大満足だったので1割程度のチップをテ−ブルに置いて席を立ちます。歩きながら眺めるていると、隣のサロンの4人組みの客のうちの一人が日本人のようです。入り口でコ−トを受け取り小額のチップを渡します。Merci,au revoir　メルスィ−　オルヴォワ−ル（ありがとう　さようなら）と挨拶して、ドアを開けてもらい、店を後にしました。

　初めてのパリで、いきなり一人で三ツ星のディナ−なんて、果たして楽しめるのだろうかと思っていましたが、結果は予想以上にすべての面で大満足でした。それにフランス語も話せないのに、暗記していたフレ−ズだけでなんとかなってしまいました。

　でも、ふっと思いました。「これって、まぐれ？」
　そこで決意しました。他のお店も行ってみよう！　

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